「器械出しって、先生に言われた器械を出すだけでしょ…」
新人の頃、そんな風に思っていませんでしたか?
器械出しでは、指示された器械をタイミングよく渡すことにばかり意識が向きがちです。
しかし実際は、渡すべき器械をあらかじめ把握しておくために、術前の情報収集が欠かせません。
病名や術式はもちろん、患者さんの体格や既往、アレルギーの有無まで、確認しておくべき項目は意外と多いもの。
これらを事前に押さえておくことで、術中に起こりうる展開を予測しながら準備を進められるようになります。
今回は、器械出し看護師が確認しておきたい情報収集のポイントを7つに分けてご紹介します。
新人さんはもちろん、改めて見直したい方もぜひ参考にしてみてください。

自著
総合医学社「オペ看ノート」
器械出し看護師も情報収集が必要?

術前の情報収集は、これから行われる手術の術式や患者さんの状態を把握するために行います。
目的は、術中に起こりうる展開をあらかじめ予測し、必要な器械・器材を準備しておくことです。
たとえば「癒着が強そうだから、この器械もすぐ出せるようにしておこう」「体格的に、長めの鑷子が必要かも」といった見通しを立てられるかどうかは、情報収集の質にかかっています。
指示が出てから慌てて探すのとあらかじめ準備できているのとでは、術中の対応スピードが変わってきますよね。
ただし、緊急手術の場合は話が別です。
時間的な余裕がなく、ざっくりした情報のまま器械出しに入ることも…。
そうした状況でも落ち着いて対応できるよう、日頃から情報収集の視点を持っておくことが大切です。

外回り看護師が行う術前訪問。
カルテだけでは分からない患者さんの様子を直接確認できるため、その内容を器械出し側でも共有しておくと、より具体的な準備につながります。
器械出し看護師の情報収集すべき7項目


器械出し看護師が術前に確認しておきたい7つの項目を、ひとつずつ見ていきます。
どれも準備の質を左右する大切なポイントなので、自分が担当する手術に置き換えながら読んでみてください。
病名・術式・再建方法
同じ術式でも、病名によって手順や再建方法が異なることがあります。
左右がある場合は、患側はどちらか確認しておきます。



患者の状態によっては、術中に術式が変更されることも!
そこまで想定して、器械・資材を準備していくよ。
患者の体格
腹部の手術では、肥満患者だと視野の確保が難しくなります。
患者さんの体格や術野の深さに応じて、長さのある鑷子・鉗子や深く幅の広い筋鉤が必要になるかもしれません。



やせ型・小柄な患者では小児用の器械が必要なことも!
手術の既往
過去に受けた手術の術式や部位を確認しておきます。
創傷治癒の過程で組織同士が癒着し、剥離が困難になったり出血リスクが高まることがあります。



例えば、剥離が困難で腹腔鏡手術が開腹移行になることも…。
情報収集の段階で、心づもりをしておくとパニックにならないよ!
アレルギー
消毒薬(特にアルコール)や、ラテックスアレルギーの有無をチェックします。
疑わしい場合はラテックスフリー手袋などを準備します。



術野の消毒でポビドンヨードを使用する場合は、ヨードアレルギーの有無も確認しておきたいね!
凝固障害の有無
大量出血につながる要因に、凝固障害(PLT・APTT・PT-INR・FDPや抗凝固薬・抗血小板薬の内服歴)、肝機能障害、腎機能障害が挙げられます。
ガーゼなどの資材を多めに準備するとともに、術式変更の可能性も視野に入れて心構えをしておきましょう。



ガーゼを多めに準備しておこうかな…。
使用する器械・材料の有無


エネルギーデバイスやインプラントなど、種類によって組み立て方が違うことがあります。
事前に何を使用するか把握し、取り扱い方法を確認しておきます。



「〇〇Dr専用の鑷子」など特製の器械を使用することも!
手術体位


手術体位により、器械出し看護師の立ち位置や器械台の位置を確認しておきます。
ピッキング
ピッキングとは、術式に必要な器械や資材を準備する作業のことです。



手術がスムーズに進むかどうかは、このピッキングの精度に大きく左右されると言っても過言ではありません!
基本の流れとしては、術式ごとの器械リストや過去の記録を確認しながら、必要な器械セット・単品器械・縫合糸・ガーゼなどを揃えていきます。
このとき、器械の滅菌期限もあわせて確認しておきましょう。
ここで大切なのが、「術式通り」だけでなく「個別性」まで考えて準備することです。
たとえば、体格が大きい患者さんであれば長めの鑷子や深い筋鉤を追加する、癒着が予想されるなら剥離用の器械を多めに用意しておく、といった具合です。
ここまでご紹介してきた情報収集の内容が、まさにここで活きてきます。
とはいえ、最初のうちは何をどこまで個別に準備すればいいのか、判断が難しいと感じるかもしれません。
迷ったときは、術前訪問を行った外回り看護師に相談してみるのもひとつの方法です。
【実践編】頭の中でシミュレーションしてみよう


情報収集した内容は、頭の中で手術の流れをシミュレーションしてみると、当日の忘れ物を防ぎやすくなります。
ここでは「胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術」を例に、実際の思考の流れをのぞいてみましょう。
このように、収集した情報をもとに手順を頭の中でなぞっておくと、「次に何が必要か」を先回りして準備できるようになります。
慣れないうちは時間がかかりますが、繰り返すうちに自然とできるようになるはずです…!
おわりに
器械出し看護師が確認しておきたい情報収集のポイントを、7項目に沿ってご紹介しました。
病名・術式・再建方法、患者さんの体格、手術の既往、アレルギー、凝固障害の有無、使用する器械・材料の有無、手術体位…
どれも一つひとつは当たり前に思えるかもしれません。
ですが、これらを事前に押さえておくかどうかで、術中の落ち着き方や対応スピードは大きく変わってきます。
情報収集からピッキング、そして頭の中でのシミュレーションまで一連の流れとして身につけておくと、当日の忘れ物や慌てる場面もぐっと減らせるはずです。
最初は時間がかかったりうまくいかなくても、繰り返すうちに自分なりのやり方が見えてくると思います。
焦らず、少しずつ自分の引き出しを増やしていきましょう。
【参考文献】
- 齋藤直美 著:先輩ナースが書いた手術看護ノート ,照林社 ,p122-129,2020




















