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しゅがー
手術室看護師
准看護師3年(療養病棟)
正看護師6年(手術室)

【資格】
・正看護師
・YMAA認証マーク取得
・KTAA認証マーク取得

【Instagram】
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手術器械が落下!フラッシュ滅菌(ハイスピード滅菌)の対応マニュアル

手術中、器械出しをしていて「ガシャン!」と器械を床に落としてしまった経験はありませんか。
新人のころは頭が真っ白になり、「どうしよう…」と固まってしまう場面ですよね。

手術器械には予備が用意されているものもありますが、整形外科手術の借用器械など予備がない器械も少なくありません。
落とした器械をすぐに使いたいけれど、どう対応すればいいのか。
そんなときに役立つのが「フラッシュ滅菌(ハイスピード滅菌)」です。

この記事では、器械を落としてしまったときの対応から、洗浄、フラッシュ滅菌の実際の手順までを順番に解説します。
あわせて、フラッシュ滅菌の注意点やリスクについても、あわせて押さえておきましょう。

この記事を書いた人
しゅがー

自著
総合医学社「オペ看ノート」

メディカ出版「メディカLIBRARY」
エッセイ:オペナースしゅがーの脳腫瘍日記

クラシコ株式会社「NURSE LIFE MIX」
記事:オペ看ラボ
漫画:しゅがーは手術室にはいられない


Instagramはこちら

もくじ

手術中に手術器械を落としたらどうする?

手術中に器械を落としてしまったら、まず外回り看護師に声をかけます。
「すみません、〇〇を落としてしまいました」と素直に伝えましょう。

滅菌の有無や新たな器械を出すか出さないかの判断ができる場合は、そのまま外回り看護師に伝えます。
自分で判断できない場合は、外回り看護師に相談してみてください。
その後の対応をリードしてくれるはずです!

なお、落下した器械は「不潔な器械」として扱います。
器械カウントに影響するため、落下した器械の名称と本数も合わせて伝えるようにしましょう。

私は、手術チーム全員に共有できるよう、室内のホワイトボードに記載していました。

急ぎで滅菌が必要か判断する

声をかけたあとは、「予備の器械があるかどうか」で対応が大きく分かれます。
判断が遅れると手術の進行に影響するため、外回り看護師と一緒に確認しましょう。

予備がある器械の場合

外回り看護師が対応します。

  • 落とした器械を回収し、本数を管理する
  • 必要なら予備の器械を術野に出す

予備があれば、慌ててフラッシュ滅菌をかける必要はありません。

予備がない器械の場合

洗浄 → フラッシュ滅菌の流れで、大急ぎで再滅菌。

具体的な洗浄方法とフラッシュ滅菌の手順は、このあと順番に説明していきます。

滅菌の前提知識:洗浄

滅菌の話に入る前に、忘れてはならないのが「洗浄」です。

洗浄とは、対象物からあらゆる異物(汚れなど)を物理的に除去することです。
汚れが残ったままでは、どれだけ高性能な滅菌器にかけても滅菌は不完全になります。
「滅菌の前には必ず洗浄」が大原則です。

洗浄方法には「用手洗浄」と「機械洗浄」の大きく分けて2種類あります。

用手洗浄

人の手でブラッシングや拭き取りを行う方法です。
落とした器械の汚れをその場ですぐに落とせるため、緊急対応の場面でも使えます。

機械洗浄

ウォッシャーディスインフェクター(WD)などの専用機器を使う方法です。
一定の品質で大量の器械を洗浄できる利点がありますが、立ち上げや運転に時間がかかります。

洗浄については、下記の記事でも詳しく解説しています。

今回のように手術中の緊急対応では、用手洗浄を選択するのが多いです。

用手洗浄は、汚れの落とし方によって大きく3つに分けられます。

スクロールできます
方法概要適した器械
ブラッシング洗浄洗剤とブラシで汚れを落とす内腔のある器械・繊細な器械の前洗浄
浸漬洗浄洗浄剤に浸け、見えない汚れを浮かす内腔のある器械(洗浄液を十分に満たすこと)
清拭洗浄洗剤とガーゼで汚れを拭き取る水漏れ・浸漬厳禁の器械

基本的にフリーの看護師や助手さんに依頼することが多かったよ!

フラッシュ滅菌(ハイスピード滅菌)

「名前は聞いたことがあるけれど、実際にどんな滅菌方法なのか曖昧…」という方も多いのではないでしょうか。
フラッシュ滅菌(ハイスピード滅菌)の仕組みと実際の手順を順番に確認していきましょう。

フラッシュ滅菌(ハイスピード滅菌)とは

フラッシュ滅菌(ハイスピード滅菌)とは、高圧蒸気滅菌の一種で、真空引きや乾燥などの工程を短縮した緊急用の滅菌法です。

フラッシュ滅菌は通常の器械準備に使うものではなく、あくまで「緊急時の手段」です!

「フラッシュ滅菌」と「ハイスピード滅菌」、それぞれ滅菌工程が違うようです…!

フラッシュ滅菌の別の呼び方として「ハイスピード滅菌」と言うことがあり、しばしば混同して使われることがあります。この記事では、真空引き1回で行う高圧蒸気滅菌をフラッシュ滅菌と呼んでいます。例えば、通常真空引き3回+滅菌時間10分で滅菌をしている施設が、真空引き3回+滅菌時間5分で行うハイスピード滅菌は、フラッシュ滅菌とはしません。

株式会社 名優:【一覧画像あり】滅菌とは?さまざまな滅菌方法まとめ

フラッシュ滅菌の方法

卓上型オートクレーブの一例として「ステイティムカセットオートクレーブ」を使った手順を紹介します。

STEP
貯水タンクキャップをはずし、満量近くまで貯水タンクに蒸留水を注ぐ。
STEP
電源スイッチを入れる。
STEP
滅菌したい器械とケミカルプロセスインジケーターをカセットの中に入れてフタを閉じ、本体にカセットを入れる。
STEP
タッチスクリーンを操作し、実施する滅菌サイクルのボタンを押す。

未包装サイクル、中空包装サイクル、ゴム・プラスチックサイクルなどがある。

鋼製小物を急いで滅菌をしたい場合は、未包装サイクルを選択することが多かったです。

STEP
スタートボタンを押す。
STEP
滅菌サイクル、空気乾燥サイクル完了後、カセットを取り出す。

しっかり滅菌できているか、ケミカルプロセスインジケーターを確認しましょう!

フラッシュ滅菌の注意点・リスク

すべての器械に使えるわけではない

フラッシュ滅菌に使う高圧蒸気滅菌は、熱・水分に弱い器械には使用できません
具体的には、精密光学機器・カメラケーブルなどは対象外です。

滅菌の質の担保が難しい

通常の器械セットと比べると、洗浄・滅菌のプロセス確認が簡略化されやすいという側面があります。
緊急時ほど焦りから洗浄が不十分になりやすいため、意識的に丁寧な洗浄を心がけることが大切です。

搬送中の再汚染リスクがある

未包装で滅菌した器械は、滅菌後の搬送中に外部からの汚染を受けやすいという弱点があります。
滅菌完了後はできる限り速やかに術野へ運び、無菌操作のもとで渡すようにしましょう。

滅菌直後はとても熱いです。
やけどしないように注意しましょう!

急いでいても記録・管理を怠らない

フラッシュ滅菌を実施した場合は、実施日時・器械名・滅菌サイクル・担当者などを記録することが求められます。
施設によって記録様式は異なりますが、いざというときのトレーサビリティ(追跡可能性)のために記録は必須です

おわりに

手術器械の落下は、誰にでも起こりうるトラブルです。
大切なのは、ひとりで抱え込まずにまず外回り看護師に声をかけること
そこから「予備の有無を確認 → なければ用手洗浄 → フラッシュ滅菌」の流れで進めれば、慌てず対応できます。

フラッシュ滅菌は心強い緊急手段ですが、あくまで非常用です。
普段から器械の予備を把握しておく、卓上型オートクレーブの操作に一度は触れておく、といった日頃の備えが、いざというときの落ち着きにつながります

「落とした!」のひと声を出せる雰囲気づくりも含めて、チームで支え合いながら安全な手術を進めていきましょう。

【参考文献】

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