手術室に配属されたばかりの頃、電気メスの設定を聞かれて戸惑った経験はありませんか。
どうしたらいいのか先輩に確認してもらった、という方も多いのではないでしょうか。
電気メスの設定は医師の指示の元、基本的に外回り看護師が行います。
基本をしっかり押さえておくことで、自信を持って業務にあたれるようになります。
この記事では、電気メスの基本的な仕組みから、モノポーラ・バイポーラの違い、正しい渡し方、そして設定のモードまで、手術室看護師として知っておきたい内容を順を追って解説します。
新人さんはもちろん、改めて基礎を整理したい方も、ぜひ参考にしてくださいね。

自著
総合医学社「オペ看ノート」
電気メスとは

電気メスは、高周波電流による熱エネルギーで、組織の切開・止血を行う器械です。
電気メスは、大きく分けて2種類あります。
- モノポーラ型
- バイポーラ型

「電メ」「バイポ」なんて、略して呼ばれたりするよ。
モノポーラ型の仕組み
モノポーラ型は、電極が1本のタイプです。
高周波電流はメス先から患者さんの体内を通り、対極板で回収されます。


対極板は、患者さんに貼付し、広い接触面積をもつ電極として高周波電流を回収する役割があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 推奨する貼付部位 | 大腿部前面・後面、または上腕部 |
| 貼付する向き | 長方形の対極板を使う場合、対極板の辺の長い部分をメス先に向けて貼る |
バイポーラ型の仕組み
バイポーラ型は、電極が2本のタイプです。


高周波電流は一方の電極から患者さんの組織に流れ、もう一方の電極で回収されます。



バイポーラは、先端同士で電流が流れて回収もできるから、対極板はいらないんですね!
モノポーラとバイポーラの比較


2つの違いを、表で整理してみましょう。
| 項目 | モノポーラ | バイポーラ |
|---|---|---|
| 電極 | 電極1本 | 電極2本 |
| 対極板の要否 | 必要 | 不要 |
| 電流の広がり | 体内を広く通過 | 電極先端の挟んだ組織のみ |
| 対象組織 | 広い範囲の生体組織など | 細い血管、神経周囲など、精密な操作など |
電気メスの正しい渡し方


電気メスは、モノポーラ・バイポーラどちらも、鉛筆持ちで術者に渡します。
このとき、コードは術者が握り込まないよう、手背側にくるようにするのがポイントです。



下から渡す場合は、先端を閉じた状態で渡します。
先端が鋭利なものもあるので気を付けてください…(何回も手袋を破って不潔になった過去があります…)
高周波手術装置(ジェネレーター)とは
電気メスは、本体(ジェネレーター)にハンドピース(電極)を繋げて使用します。
ジェネレーターには、対応するデバイスによっていくつか種類があります。
| 製品名 | 対応デバイス |
| BONIMED バイポーラ凝固止血器 SuperGenerator | バイポーラのみ |
| Valleylab™ FX8 エネルギープラットフォーム | モノポーラとバイポーラ、どちらも使える |
| Valleylab™ FT10 エネルギープラットフォーム | モノポーラ、バイポーラ、他のエネルギーデバイスも使える |



施設によって導入されているものが違うから、事前に何が使われているかチェックしよう。
モノポーラのモード設定
モノポーラには、一例として切開(CUT)と凝固(COAG)のモードがあります。


| モード | 仕組み | 組織への作用 |
|---|---|---|
| 切開(CUT) | ジュール熱 > 放電熱 | 組織の蒸散 |
| 凝固(COAG) | ジュール熱 < 放電熱 | 組織の蛋白変性 |
設定するのは、主に「出力(W・ワット)」と「モード」の2つです。
※製品によっては「エフェクト」を設定する場合もあります。
切開成分と凝固成分の割合を変えて、さまざまなモードを備えている製品が多くあります。


| ピュアカット(Pure Cut) | ブレンドカット(Blend Cut) | |
|---|---|---|
| 特徴 | 鋭い切開(皮膚切開など) | 凝固成分を混ぜている(開腹手術など) |
| 目安 | 30〜50W | 40〜70W |
凝固モードにも、いくつかの種類があります。


| フォースドコアグ (Forced Coagulation) | ソフトコアグ (Soft Coagulation) | スプレーコアグ (Spray Coagulation) | |
|---|---|---|---|
| 特徴 | 一般的な凝固モード (局所的な出血の止血) | 放電を伴わない (浅い止血など) | アーク放電で止血する (広範囲、表層の止血など) |
| 目安 | 30〜60W | 20〜40W | 50〜80W |
※いずれも製品による



設定するときは、「電メ、30/30です!」など、チームみんなに聞こえる声で共有しましょう!
勉強熱心なあなたへ。
その頑張り、評価される職場ですか?


おわりに
電気メスは、手術室で毎回使う器械でありながら、意外と体系立てて教わる機会が少ない分野でもあります。
モノポーラとバイポーラ、それぞれの仕組みを知っておくだけで、術野の見え方も、少し変わってくるかもしれません。
対極板の要不要や、モードの違いも、最初は覚えるだけで精一杯なところがあります。
ただ、一度仕組みとセットで理解しておくと、次に同じ場面に出会ったときの見え方が変わってくるかもしれません。
ジェネレーターは、機種によって細かい仕様は異なるので、実際の現場では自施設のものと取扱説明書を合わせて確認してみてくださいね。
【参考文献】
- 讃岐 美智義 編著:手術室のME機器.メディカ出版 ,p215-219,2025
- 川原美穂子 編著:完全保存版! 手術室の器械・器具210(オペナーシング2024年春季増刊).メディカ出版,p58-61,2024
- NPO法人国際健康福祉センターデバイス研究会 編:手術室デバイスカタログ,金原出版 ,p2-15,2022
- 寺尾保信・木村武一郎 ・去川俊二 著:毒舌ツクモ神の外科道具絵巻.医学書院,p70-76,2023
- 下間正隆:カラーイラストでみる外科手術の基本.照林社,p36-47,2004
- 畑啓昭 編:研修医のための見える・わかる外科手術,羊土社 ,p30-35,2015
- 外科医TEE! 編著 :外科研修おたすけBOOK.メジカルビュー社,p187-191,2025
- 泉工医科工業株式会社:電気メスの本















