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しゅがー
手術室看護師
元手術室看護師のしゅがーです。
看護師歴9年、そのうち6年を手術室で過ごしました。
現在は「オペ看ノート」を運営しながら、手術看護を学ぶ方に向けて、わかりやすい情報を発信しています。

▼資格
・正看護師
・YMAA認証マーク取得
・KTAA認証マーク取得

▼著書
・『オペ看ノート』(総合医学社)重版

▼執筆
・『外科研修おたすけBOOK Ⅲ 器具の知識』(メジカルビュー社)分担執筆

▼連載実績
・月刊誌「オペナーシング」エッセイ(メディカ出版/2022.09〜2023.08)
・「メディカLIBRARY」エッセイ(メディカ出版/2022.12〜2023.08)
・「NURSE LIFE MIX」NLMメイト記事連載(クラシコ株式会社/2023.04〜2026.03)

【手術器械】手術室看護師が知っておきたい!鑷子・鉗子の基本|名称・特徴・使い分けまとめ

手術室で頻繁に登場する「鑷子(せっし)」と「鉗子(かんし)」。
どちらも組織を把持する器械ですが、構造や使い方、注意点は大きく異なります。

「有鉤?無鉤?どれを渡すのが正解?」
「短い鉗子と長い鉗子、入れ替えのタイミングは?」

新人さんだけでなく、経験を重ねても迷う場面はありますよね。

今回は、鑷子と鉗子の基礎知識から、よく使われる種類、使用前点検、そして無言で手を差し出されたときの対応まで、実践目線でまとめました!

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元手術室看護師

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もくじ

鑷子(せっし)

手術室で最も使用頻度の高い器械のひとつが鑷子(セッシ)です。
まずは鑷子の基本と種類、そして安全に扱うための視点を整理していきます。

鑷子とは

鑷子は、主に組織を把持・牽引する器械。
ラチェットはなく、ピンセットのような構造が特徴です。

さまざまな種類があって、目的や対象となる組織に応じて使い分けます。

有鉤・無鉤の違い

鑷子には「有鉤」と「無鉤」があります 。

有鉤無鉤
先端に鉤がある。
組織を確実に把持できる。
鉤はない。
把持力は弱いが組織の損傷は少ない。

有鉤の鑷子は、腸管や血管などの軟らか組織を把持すると鉤が噛み合うことで組織が挫滅してしまう!

血管操作で誤って有鉤を渡してしまうと…

もしかしたら、血管に穴が開いて大出血しまうかもしれない!
注意!!

よく使われる鑷子

スクロールできます
名称形状対象概要・注意点
有鉤鑷子皮膚・皮下組織・筋層など皮膚・皮下組織・筋層・靭帯など硬い組織に用いる。
「鉤ピン(コウピン)」とも呼ばれる。
無鉤鑷子腹腔内・胸腔内など軟らかい組織や粘膜、血管の把持に用いられる。
ガーゼなど、医療材料を扱うときにも使用される。
アドソン鑷子皮膚・皮下組織・筋層など先端が細く、細部の組織をピンポイントで把持できる。
有鉤と無鉤がある。
医師によっては「ヒラメ」と呼ぶ人もいる。
ダイヤモンド鑷子腹腔内・胸腔内など先端がダイヤチップで加工されている鑷子で、先端が細く、繊細な操作ができる。
そのため、剥離や血管操作に用いられる。
術中での使用頻度が高い!
ドベーキー鑷子先端は細く、鋸状で細かい横溝と深い縦溝がある。
繊細な操作ができるため、剥離や血管操作に用いる。
先端が直のものと、曲がりのものがある。
マッカンドー鑷子軟部組織など先端に向かって細くなっていて、組織をピンポイントで把持できる。
有鉤と無鉤がある。
ダボというストッパーがついており、把持するときに先端が開かないようにダボで支えている。

鑷子の使用前点検・渡し方

手術前に器械の点検を行います。

  • 把持面に摩耗がないか
  • 先端の嚙み合わせは良好か
  • ダイヤチップや鉤の破損はないか

鑷子を渡し方

  • 先端を閉じる
  • 把持面を下にする
  • 術者に鉛筆持ちで渡す

手術中、無言で手を差し出されたら…

鑷子に限らず、手術中、無言で手を差し出されることがあります。

外科医が術野から目を離さず、次に使う器械を求めている合図です。
手術がスムーズに進んでいるほど言葉は少なくなり、動きやタイミングだけでやり取りする場面も多くなります…。
術者は手技に集中しているため、器械出し側が状況を読み取り、適切に確認することが重要になります。

これは、新人手術室看護師には本当に難しいことだと思います。
手術の流れ、術者の癖、器械の使われるタイミング…
知識だけではなく、経験がないと予測できません。

最初は分からなくて当然で、「読めない自分」を責める必要はありません。
大切なのは、自分で確認すること!
器械の取り違えを防ぐための一言は、チーム医療を支える大切なコミュニケーションだと思っています。

私の場合は…

【考えても全く分からないとき】

どの鑷子ですか?

【思い当たるものはあるが、自信がないとき】

〇〇ですか?

「絶対これだ!」と思っても渡すときは「〇〇です」と声を出して渡していました。

外科医は手術に集中しており、必ずしもこちらの意図や判断が伝わっているとは限りません。
だからこそ、黙って渡すのではなく、言葉で確認しながら手渡すことが安全につながると考えています。

小さな声かけですが、誤認防止や手術の流れを守る大切なコミュニケーションの一つだと思っています。

鉗子(かんし)

鑷子と並んで頻繁に使用されるのが鉗子(カンシ)です。
ラチェットを備えた構造が特徴で、把持や牽引など役割はより多岐にわたります。

鉗子とは

鉗子は、主に組織を把持・牽引する器械で、持ち手にラチェットが付いているのが特徴です。
鑷子と同様に、目的や対象組織によって使い分けます。

鉗子にも「有鉤」と「無鉤」があります。

有鉤無鉤
先端に鉤がある。
組織を確実に把持できる。
鉤はない。
把持力は弱いが組織の損傷は少ない。

有鉤の鉗子は、腸管や血管などの軟らかい組織を把持すると鉤が噛み合うことで組織が挫滅してしまう!注意!

鉗子の構造

鉗子の構造は以下の通りです。

把持部(ジョー)横溝型や縦溝型など、さまざまをものがある。
箱型関節多くは箱型関節だが、横はずし関節やねじ止め関節など、さまざまをものがある。
ラチェット把持部が閉じた状態を保持できる、ロック機構。

ラチェットを外す際は、母指を押して環指を引くのがポイントです。

よく使われる鉗子

スクロールできます
名称形状対象概要・注意点
コッヘル鉗子比較的硬い組織など把持部には鉤がついていて、靭帯や筋層、皮下などの硬い組織に使用する。
腸管などの軟らかい組織の把持は鉤が噛み合うことで組織が挫滅してしまうので、使用しない。
ペアン鉗子軟らかい組織など把持部には鉤がなく、粘膜や血管、腸管などの軟らかい組織に使用する。
コッヘルと比べると把持力は弱い。
柄には目印として横溝が入っている。
モスキート鉗子出血点の把持など小型の鉗子で、手術操作に繊細さが求められる場などで使用される。
有鉤のものは「モスキートコッヘル」、無鉤のものは「モスキートペアン」と呼ばれる。
結紮用の糸を把持したり、テーピングの把持にも用いられる。
ケリー鉗子剥離対象の組織など柄が長めの鉗子。ケリー鉗子は、ペアン鉗子よりも細身でしなりがあり、組織の把持や剝離に用いられる。
剥離鉗子先端が細く、繊細な操作に適している。
さまざまな長さや太さ、形状があり、術野の深さや角度によって適切な鉗子を選択する。

「剝離鉗子」と呼ばれる場合、ケリー鉗子を含めた剝離操作に用いる鉗子の総称として使われることも多いです
その多くは先端が細く、繊細な操作に適していて、さまざまな長さや太さ、形状があります。
手術室看護師は、術野の深さや角度によって適切な鉗子を選択しなければいけません。

ケリー鉗子や剥離鉗子は、血管操作で頻繁に使用されます。
血管周囲の剥離や結紮の糸通しの場面では、医師は特に集中して、細心の注意を払いながら操作していることを忘れずに…!

このタイミングでの声掛けや器械の回収は、先生の集中を妨げないよう気を付けていました。

短い鉗子と、長い鉗子の入れ替えのタイミング

鉗子は、術野の深さに応じて長さを使い分けるのが基本です。(鑷子などの器械も同様)

術野が浅い段階では、短い鉗子を使用します。
一方で、手術が進行して術野が深くなると、創部の奥まで安全に届かせる必要があるため、長い鉗子へと変更します。

術野が深いのに短い鉗子を使うと目的の組織に届かない…ということに。
また、「手ごと」創の中に入ってしまうと、術野の妨げになります。

つまり、
術野が浅い → 短い鉗子
術野が深い → 長い鉗子

というのが基本的な考え方です。

…でも、実際はこれがなかなか難しいんです。

「術者によって好みの長さが違う」
「同じ場面でも術式や体格で変わる」

教科書どおりにいかない場面が本当に多くて、最初は予測が外れてばかりでした。
だからこそ、最初から完璧に読めなくて大丈夫。
経験を重ねながら、「そろそろ長い鉗子に変えようかな?」と考える回数が増えていくことで、少しずつタイミングが分かってきます。
(偉そうなことを言っていますが、私も練習中です…。難しいですよね…)

私の場合は「鉗子の関節部が見えなくなってきたな」と感じたら、入れ替えの目安にしていました。

判断が難しいときは、「長いものに変えますか?」と声を掛けていました。

鉗子の使用前点検・渡し方

使用前点検は鑷子と同様です。

  • 把持面に摩耗がないか
  • 先端の嚙み合わせは良好か
  • ダイヤチップや鉤の破損はないか

渡し方のポイント

  • ラチェットは1段だけかける
  • 曲型の鉗子は、把持部の弯曲が内側に向くようにする

おわりに

鑷子や鉗子は、手術室で毎日のように手に取る基本の手術器械です。
しかし、「基本」と言われるからこそ奥が深く、名称を覚えるだけでは本当に使いこなせるようにはなりません。
どの組織を扱っているのか、術野の深さはどうか、術者が次に何をしようとしているのか…
そうした情報を少しずつ結びつけながら理解していくことで、器械出しがスムーズになっていきます。

最初は分からないことだらけで当然です。
私自身も、予測が外れたり、怒られたり、迷ったりする場面を何度も経験してきました。
それでも、一つひとつ確認しながら経験を積むことで、「なぜこの器械なのか」が少しずつ見えてきます。

この記事が、鑷子・鉗子への理解を深めるきっかけとなり、日々の手術看護の安心につながればうれしいです。

【参考文献】

  • 川原美穂子 編著:完全保存版! 手術室の器械・器具210(オペナーシング2024年春季増刊).メディカ出版,p20₋25,2024
  • NPO法人国際健康福祉センターデバイス研究会 編:手術室デバイスカタログ,金原出版 ,p125-130,2022
  • 寺尾保信・木村武一郎 ・去川俊二 著:毒舌ツクモ神の外科道具絵巻.医学書院,p56-69,2023
  • 畑啓昭 編:研修医のための見える・わかる外科手術,羊土社 ,p30-33,2015
  • 下間正隆:カラーイラストでみる外科手術の基本.照林社,p26-35,2004
  • 大野 義一朗:消化器外科の手術看護.医学書院,p123-124,2018

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