【麻酔カルテに必ず書いてある】ASA-PSってなに?【手術室看護師のお勉強】

麻酔科のカルテに必ずASA-PSが登場してるけど、何だろう?

今回は麻酔前評価に欠かせない【ASA-PS】について解説するよ!

この記事を書いた人
麻酔の看護師ぱん

手術室・病棟看護師を経て、大学院で麻酔について学ぶ。
現在はベテランの周麻酔期看護師として日々麻酔業務を担当。

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もくじ

ASA-PSとは?

米国麻酔科学会(American Society of Anesthesiologists:ASA)による術前身体状態(Physical Status:PS)の分類のこと!

★point

一言でいうならば、「麻酔を受ける患者の術前全身状態を評価するもの」

定義

全部で6段階!

1963年に採用されたものは5段階で、その後長らく使用されていた。1980年に脳死患者に対するASA-PS 6が新たに追加され、6段階になった。2014年には最新版が発表され、2020年には修正がされている。

Statement on ASA Physical Status Classification System
最終修正日 2020年12月13日(原案承認:2014年10月15日)

ASA-PS定義
1通常の健康な患者
2軽度の全身疾患を有する患者
3重度の全身疾患を有する患者
4常に生命を脅かすような重篤な全身疾患を有する患者
5手術なしでは生存が期待できない瀕死の患者
6臓器提供のために臓器を摘出する脳死宣言患者

※ 緊急手術の場合、ローマ数字の後に【E】をつける。緊急手術とは治療の遅れが生命や身体の一部に致命的になる状態のこと。

ASA-PSで瞬時に患者を把握!

★point

ASA-PSは麻酔科が患者評価に使うシンプルな共通言語

ASA-PSは、患者の重症度を互いに共有するために用いられる。
特に急変時や急な担当交代が必要な際には、数秒で患者背景を把握しなくてはならない。
ASA-PSを用いることで即時に患者の重症度を把握し、治療介入を行うことができる。

患者申し送りの場

分類の具体例

定義の不確実性を補う目的で、2014年それぞれのPSに対する具体例が追加された!
成人・小児・産科に分けて示されている。

1. 成人

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ASA-PS成人の例
1健康・非喫煙・アルコール摂取なし、または最小限
2実質的な機能制限のない軽症のみ・現在の喫煙者・機会飲酒・妊娠・肥満(30<BMI<40)・コントロール良好なDM/HT・ 軽度の肺疾患
3実質的な機能制限 ;1つ以上の中等度から重度の疾患・コントロール不良のDMまたはHT・COPD・病的肥満(BMI≧40)・活動性肝炎・アルコール依存or乱用・植込型ペースメーカー・中等度のEFの低下・定期的に透析を受けている末期腎不全・3ヵ月以上経過した心筋梗塞、脳血管障害、一過性脳虚血疾患、 冠動脈疾患/ステント留置
4・最近(3ヵ月未満)の心筋梗塞、脳血管障害、一過性脳虚血疾患、 冠動脈疾患/ステント留置・進行中の心臓虚血または重度の弁機能障害、 重度のEF低下・ショック・敗血症・播種性血管内凝固(DIC)・定期的な透析を受けていない急性腎疾患や末期腎不全
5・破裂した腹部/胸部動脈瘤・重症外傷・圧迫所見のある頭蓋内出血・重篤な心疾患または多臓器/全身機能障害に直面している腸管虚血など

例えば…

2. 小児

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ASA-PS小児の例(これらに限定されない)
1健康(急性・慢性疾患なし)・年齢に対するBMIパーセンタイル正常値
2・無症候性先天性心疾患・良好にコントロールされた不整脈・増悪のない喘息・良好にコントロールされたてんかん・非インスリン依存性糖尿病・年齢に対するBMIパーセンタイル異常・軽度/中等度OSA(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)・寛解状態の腫瘍学的状態・軽度の制限を伴う自閉症正常妊娠*
3・未修正の安定した先天性心疾患・増悪を伴う喘息・コントロール不良のてんかん・インスリン依存性糖尿病・病的肥満・栄養不良・重度のOSA(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)・腫瘍状態・腎不全・筋ジストロフィー・ 嚢胞性線維症・臓器移植歴・脳/脊髄奇形・症候性水頭症・PCA60週未満の未熟児・重度の制限を伴う自閉症・代謝性疾患・気道困難・長期非経口栄養・生後6週未満の正期産児
4・症候性先天性心臓異常・うっ血性心不全・活動性未熟児後遺症・急性低酸素虚血性脳症・ショック・敗血症・播種性血管内凝固症候群・植込み型自動除細動器・人工呼吸器依存症・内分泌障害・重度の外傷・重度の呼吸窮迫・進行した腫瘍学的状態
5・大規模な外傷・大量影響を伴う頭蓋内出血・ECMOを必要とする患者・呼吸不全または呼吸停止・悪性高血圧・非代償性うっ血性心不全・肝性脳症・虚血性腸または多臓器/系統の機能不全。

3. 産科

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ASA-PS産科の例
1
2・正常妊娠*・良好にコントロールされた妊娠高血圧症候群・重篤な症状を伴わないコントロールされた子癇前症・食事療法でコントロールされた妊娠DM
3・重症の子癇前症・合併症のある妊娠性DM、またはインスリンの大量投与が必要な妊娠性DM・抗凝固療法が必要な血栓性疾患。
4・HELLPまたはその他の有害事象を合併した重症の子癇前症・EF<40の周産期心筋症・未補正/後天性または先天性の心疾患
5子宮破裂

*妊娠は病気ではないが、出産の生理学的状態は、女性が妊娠していないときから著しく変化するため、合併症のない妊娠を持つ女性にASA 2が割り当てられる

臨床だけでなく、研究にも使われる

周術期領域の研究で、ASA-PSは対象患者の背景としての術前重症度を定義するために使用されている。
また、手術患者の予後予測の指標としてASA-PSの有用性に関する検討が重ねられている。

ASA-PSの弱点

ASA-PSは評価者間信頼性の低さが、しばしば問題になることがある。

評価者間信頼性??

「同一患者に対する分類が判定者によって異なる」ことによる信頼性を指すよ!
同じ患者さんのASA-PSが、ある先生は2をつけたけど、違う先生は3をつけた、という事があるんだよね。

評価者間信頼性の低さが生じる要因

①判定者要因

  • 経験症例数:多い方が低めに分類する傾向
  • 職種:看護師は低め
  • 施設:教育施設では高め

②患者要因

  • 喫煙、妊娠、外傷、肥満、COPD、睡眠時無呼吸症候群、高血圧症、腎機能障害、内分泌疾患、複数の併存疾患などがあげられている
★point

ASA-PSは周術期のリスク予測因子として有用とされているけれど、判定に幅があるということを考慮しておく必要があるということだね。

参考文献

  1. ASA Physical Status Classification System. https://www.asahq.org/standards-and-practice-parameters/statement-on-asa-physical-status-classification-system  Accessed Jun. 28, 2024.
  2. 谷 真規子. 特集 周術期マネジメント【ミニコラム】ASA-PS分類—麻酔科医が患者評価に用いる簡潔明瞭な共通言語. Hospitalist 4巻2号 (2016年6月発行)p212-21
    DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900150
  3. 津崎晃一. 徹底分析シリーズ 術前診察 基本の「き」術前評価の共通指標ASA-PSを知る—“Back to basics”. LiSA 25巻4号 (2018年4月発行)p434-437. 
    DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201103
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