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「局所麻酔薬中毒ってどんな症状が起こる?」と先輩に聞かれたけど、答えられませんでした…教えてください!



症状から対応まで一緒にみていこう!


手術室・病棟看護師を経て、大学院で麻酔について学ぶ。
現在はベテランの周麻酔期看護師として日々麻酔業務を担当。
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局所麻酔薬中毒とは





どんな時に起こる?



局所麻酔薬の偶発的血管内注入や過量投与の際に起こる!



局所麻酔を使ってから、どれくらいの時間で起きるの?



大規模な研究によると、局所麻酔薬の単回投与後、半数の症例では投与後50秒以内に出現、約3/4の症例で5分以内だったみたい!



局所麻酔薬の使用後、5分経ったら観察しなくても大丈夫?



単回投与の場合でも、投与後15 分以上で発症することもある!
例えば、TAPブロック後の血中局所麻酔薬濃度が最大になるのは、施行後から約30分。
つまりは、少なくとも 30 分間は観察することが必要だよね。



起こしやすい患者さんは?



肝機能障害、低たんぱく血症、アシドーシス、小児、高齢者、妊婦では生じやすいと言われているよ。
硬膜外麻酔や腕神経ブロックの際に、局所麻酔薬の濃度が上昇しやすいので特に注意が必要だよ!
症状
血中濃度が高まるに従い、次のような症状が出現する!
- 中枢神経症状:舌・口唇のしびれ、金属様の味覚、多弁、呂律困難、興奮、めまい、視力、聴力障害、ふらつき、痙攣など。その後、抑制症状としての譫妄、意識消失、呼吸停止などが引き続く
- 心毒性症状:初期の神経症状に伴って、高血圧、頻脈、心室性期外収縮が生じる。その後、洞性徐脈、伝導障害、低血圧、循環虚脱、心静止などが起こる
*直接血管内へ注入の場合、神経症候なしで循環虚脱を生じる事がある。心電図上は、PR延長、QRS 幅の増大が特徴
局所麻酔中毒はひとたび循環不全が起こると蘇生が困難と言われている!
予防



予防できることはあるの?
予防策
- 局所麻酔薬の投与量を最小限にする
- 穿刺後の吸引テストの実
- 少量ずつ分割しながら投与
- 局所麻酔薬中毒の発症リスクが少ない局所麻酔薬を使う
:ブピバカインよりもロピバカインやレボブピバカインの方が中毒症状は出にくい



局所麻酔薬中毒の診断には、十分な患者観察とモニタリングが重要。
だから、区域麻酔施行時には「日本麻酔科学会のモニタリング指針」に準じたモニタリングを行いましょう!
モニタリングと準備
- 酸素投与、気道確保がすぐに可能な体制で行う
:麻酔器(人工呼吸器)・気管挿管器具がすぐに使えるようにしておく - 心電図モニター、パルスオキシメータを装着する
- 血圧測定を原則として 5 分間隔で行う
- 静脈路を確保する
- 痙攣に対する薬剤を準備する
:ミダゾラム、ジアゼパム、またはバルビタールのいずれか - 脂肪乳剤を施設に常備しておく
- 体外循環が可能な一番近い施設を把握しておく
- 局所麻酔薬中毒発生時はすみやかな処置の開始と応援要請が必要となるので、区域麻酔は複数の医療スタッフがいる環境で施行する
対応



万が一、局所麻酔薬中毒が起こったらどうするの?



まずは局所麻酔薬の投与を中止、応援の要請を!
そして初期治療を行うよ!
初期治療
- 気道確保および100%酸素投与、必要に応じて気管挿管、人工呼吸
- 痙攣の治療:ベンゾジアゼピンが推奨される(5-10mg投与)
血圧・心拍が不安定な場合はプロポフォールの使用は避ける
重度の低血圧や不整脈を伴う場合
- 脂肪乳剤を投与
- 1.5 mL/kgを約 1 分かけて投与。その後 0.25 mL/kg/minで持続投与開始
- 5分後、循環の改善が得られなければ再度 1.5 mL/kg を投与し、持続投与量を2倍の0.5 mL/kg/minに増量。さらに5分後に再度1.5 mL/kgを投与(ボーラス投与は3回が限度)
- 循環の回復・安定後もさらに10分間は脂肪乳剤の投与を継続
- 最大投与量の目安は12mL/kg
- BLS/ACLSの手順に従って蘇生を開始
*ただし以下に変更を加える- アドレナリン投与は、少量(10-100μg)から開始
- バソプレシン、Ca拮抗薬、β遮断薬の投与は循環動態悪化を招く可能性があり、避ける
- 体外循環の準備



脂肪乳剤?



20%イントラリポス®を投与するよ!
20%脂肪乳剤の投与は「lipid rescue」と言われる有用な蘇生法。
局所麻酔薬を脂肪乳剤が取り込んで組織内濃度を低下させ、肝臓へ運ぶ及びミトコンドリアの機能を改善するという作用機序が考えられているけど、実はまだ十分に解明されてないんだ。
最後に
局所麻酔薬中毒の発症は稀だけど、危機的な状況になる場合がある。
局所麻酔薬を使用した場合は、例え全身麻酔との併用であったとしても、局所麻酔薬中毒が出現する危険性を念頭に置いておこう!
参考文献
- 日本麻酔科学会:局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド. 2016.https://anesth.or.jp/files/pdf/practical_localanesthesia.pdf (最終閲覧2024.10.27.)
- 日本麻酔科学会・周術期管理チーム委員会:周術期管理チームテキスト第4版. 日本麻酔科学会. 2020. p217-219.
- 紫藤朋美, 齊藤洋司:周術期における局所麻酔薬の使い方. 川真田樹人(編). 麻酔科医のための周術期の薬物使用法. 中山書店. 2015. p141.
- 小田裕:特集 危機的循環虚脱の鑑別・治療 Ⅱ. 各論 4. 局所麻酔中毒. 麻酔. 71(5), p503-510. 2022.
- Di Gregorio G, Neal JM, Rosenquist RW, Weinberg GL. Clinical presentation of local anesthetic systemic toxicity:a review of published cases, 1979 to 2009. Reg Anesth Pain Med 2010;35:181‒7.


手術室・病棟看護師を経て、大学院で麻酔について学ぶ。
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