手術室で働く私たちにとって、避けて通れないのが“夜中の呼び出し”。
夜中のオンコール明け、そのまま朝から通常勤務…なんてこと、ありませんか?
寝ているときに呼び出されて、慌てて病院へ。無事に手術が終わって帰宅したのは朝方…。
シャワーを浴びたらすぐ出勤。そんな生活が当たり前になっている方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな「オンコール明けの勤務」について、Instagramで集めたアンケート結果をもとに、リアルな声を紹介しながら、最近話題の勤務間インターバル制度についても分かりやすくお伝えします。
自分の体と安全のために、「休むべきときに休める環境」、一緒に考えてみませんか?

自著
総合医学社「オペ看ノート」
メディカ出版「メディカLIBRARY」
エッセイ:オペナースしゅがーの脳腫瘍日記
クラシコ株式会社「NURSE LIFE MIX」
NLMメイトとして記事連載中
記事:オペ看ラボ
漫画:しゅがーは手術室にはいられない
\フォロワー5万人/
Instagramはこちら
夜中のオンコール、対応後そのまま日勤!?

リアルな現場の声「そのまま日勤、ほんとキツい…」
「夜中に呼び出されて手術対応 → そのまま日勤」という流れ、実は珍しくありません。
私自身も、何度も経験があります。
夜中に緊急手術のコールが入り、終わるころには外がうっすら明るくなってきていて…。
「このまま着替えて出勤しなきゃ」なんて朝が、何度あったことか…。
体も頭もフラフラの状態で勤務を続けるのは、心身への負担だけでなく、ミスや事故のリスクにもつながりかねません。
「せめて半日でも休ませて…!」というのが、現場の正直な声ですよね。
アンケート結果から見えた勤務実態

Instagramで「夜中の呼び出し後、翌日は休みになりますか?」というアンケートを実施したところ、このような結果になりました。
「夜中の呼び出し後、翌日は休みになりますか?」
有給休暇 | 42%(574票) |
代休 | 18%(249票) |
そのまま日勤 | 40%(553票) |
なんと、約4割の方が“そのまま日勤”という結果に…!
24時を過ぎるオペも普通にある中で、帰宅してシャワーを浴びて、また出勤するなんて、もはや体力勝負。
「これってほんとに普通なの?」「もっとちゃんと休んでいいんじゃ…」と思わずにいられませんでした。
勤務間インターバル制度ってなに?

「夜中に呼び出されて、そのまま日勤…。でも、これって本当に当たり前のことなの?」
手術室で働く中で、こんな疑問を感じたことはありませんか?
医療の現場では、「患者さんのためなら…」と、つい無理をしてしまいがち。
でも、私たちが元気でなければ、安全な医療は提供できません。
この制度は、そんな当たり前だけど忘れがちな「休息の大切さ」に、スポットを当てたもの。
今回はその内容と、医療現場でどう活かせるのかを一緒に見ていきましょう。
努力義務!勤務間インターバル制度とは?
「勤務が終わったら、ちゃんと休む」。当たり前のようでいて、医療現場ではなかなか難しいこのルールを支えるのが、勤務間インターバル制度です。
この制度は、「前の勤務が終わってから次の勤務が始まるまでに、一定時間以上の“休息”を取りましょう」という仕組みで、2019年から事業主の努力義務として国が推奨しています。
ここでいう“休息”とは、単なる空き時間ではなく、しっかり体と心をリセットできる時間のこと。
たとえば、夜遅くまで働いた場合には「翌朝は少し遅めに出勤する」などして、インターバル(休息時間)を確保する工夫が求められます。
残業を制限したり、翌日の勤務開始を遅らせたりといった運用も、一つの方法です。
特に手術室のように不規則で緊張感のある職場では、こうした制度があることで安心して働ける環境が整っていくはず。
それに、「しっかり働いて、ちゃんと休む」ことが、患者さんへの安全にもつながるのでは…?
勤務間インターバル、具体的に何時間あければいいの?

勤務間インターバル制度を語るうえで、気になるのが「具体的に何時間あければいいの?」というポイント。
日本看護協会が以前から示している目安では、「勤務と勤務の間は11時間以上あけるのが理想」とされています。
2023 年に実施された「病院看護実態調査」では、「勤務と勤務の間隔は 11 時間以上あける」を勤務表作成基準に盛り込んでいると回答した病院は 67.1%!
現場でも少しずつ意識が変わってきていることがわかります。
ただ、「理想はわかるけど、実際には人手不足で厳しい…」という声があるのも事実。
だからこそ、インターバルをただの“目安”ではなく、病院全体のルール(制度)としてしっかり組み込むことが大切になってきますね。
勤務間インターバル制度=「スタッフの健康や生活を大切にしている」職場
「今の職場、ずっと無理して働き続けてるけど、このままでいいのかな…」
そんなふうに感じて転職を考え始めたとき、意外と見落とされがちなのが“休める仕組みがあるかどうか”。
勤務間インターバル制度がしっかり機能している職場は、単に「休める」だけではなく、「スタッフの健康や生活を大切にしている」職場でもあるということですよね。
これまでの医療現場は、「気力と体力でなんとか乗り切る」ことが当たり前とされてきました。
でも今は、「ちゃんと休めることも、働き方の大切な一部」という考え方にシフトしてきています。
転職活動をするとき、「休む権利が守られているか」「勤務間インターバル制度が導入されているか」は、長く働ける職場を見極めるポイントのひとつになりそうです。
自分の健康と未来のために、こうした制度の“ある・なし”にも、ぜひ目を向けてみてくださいね。
※参考
「看護職の夜勤・交代制勤務ガイドライン」(日本看護協会)p34
「2023 年 病院看護実態調査 報告書」(日本看護協会)表57 夜勤・交代制勤務を行う部署における勤務表作成基準に含まれる内容 p35
手術室におけるインターバル制度
手術室で働いていると、オンコールの呼び出しは避けられないもの。
「いつでも手術できるように」って待機してるだけでも、気が抜けないんですよね。
夜でも「もし鳴ったら…」と思うと、ぐっすり眠るのは難しかったりします。
そんな中で、実際に呼び出されて夜中に手術へ。
そしてそのまま朝から日勤なんて流れ、経験したことがある方も多いのではないでしょうか?
夜に出動して、ほとんど寝ないまま勤務が続くのは、体にも心にもかなりの負担になります。
だからこそ最近では、「夜に呼び出されたあとは、ちょっと休んでから出勤していいよ」とか、「特別休暇をつけて、インターバル(休息時間)を確保しよう」なんて取り組みをしている手術室も出てきています。
ちゃんと休む時間があることで、ミスも減るし、自分の体も守れる。
そんな“当たり前”が、もっと広がってほしいなと思います。
勤務間インターバル制度を導入していない理由|「声を出すこと」も、一歩かもしれない

こちらは、勤務間インターバル制度をまだ導入していない医療機関に対して行われた調査結果です。
その中で注目したいのが、「職員からの要望がないから」という理由。
なんと24.2%の施設が、そう答えているんです。
裏を返せば、「現場から声が上がれば、動き出す可能性がある」ということ。
「うちではまだ無理かも」「制度なんて遠い話だし…」と思ってしまう気持ちもわかります。
でも、制度がない=関心がない、というわけではありません。
“声が届いていないだけ”という現実もあるのかもしれません。
もちろん、すぐに大きく変えるのは難しいかもしれません。
それでも、「夜中のオンコール明け、そのまま日勤はきついです」と、ほんの一言でも伝えてみること。
それが、周囲の気づきや制度の第一歩になることもあるんです。
そしてちょうど今、2025年3月に厚労省から発行された最新のマニュアルが公開され、勤務間インターバル制度の必要性や導入のポイントが改めて整理されています。
これもまた、声を届けるきっかけのひとつになるかもしれません。
誰かが声を上げることで、「そう感じていたのは自分だけじゃなかった」と安心する仲間が、きっとそばにいます。
※参考
「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル_医療業版」(厚生労働省)
看護師が“休む”ことをもっと大切にしていい

「責任感」が強すぎて、自分を後回しにしていない?
手術室で働いていると、「自分が行かないとまわらない」「ここで抜けたら誰が代わりに…」と、つい無理をしてしまう場面がたくさんありますよね。
それは、看護師としての責任感が強いからこそ。
患者さんやチームのためにがんばる姿勢は、本当に尊いものです。
でも、そんなふうに頑張りすぎることが、知らず知らずのうちに自分の体と心をすり減らしてしまうことも。
「体調が悪くても、周りに迷惑をかけたくないから」と休めなかったり、「呼び出しがあるかも…」と眠れなかったり。
そんな日々が積み重なると、いつか限界が来てしまいます。
まずは、自分を“後回し”にしすぎていないか、ふと立ち止まって見直してみてもいいかもしれません。
休息は“甘え”じゃない、安全の一部
休むことって、なんとなく「申し訳ない」と感じてしまいませんか?
でも実は、“ちゃんと休むこと”こそが、看護の質と安全を守るために欠かせない大切な土台なんです。
勤務間インターバル制度の本質は、「働いたら、ちゃんと休もう」というシンプルなもの。
でもそれが実現できることで、集中力や判断力が保たれ、ミスや事故の予防にもつながっていきます。
自分の体調や気力を整えることは、患者さんの安全にも直結しています。
だから、休むことは甘えではなく、専門職としての責任の一部。
「安心して休める仕組み」がもっと広がっていけば、私たちも、そして患者さんも、もっと笑顔で過ごせるはずです。
おわりに|“ちゃんと休む”を、もっと当たり前に
オンコール対応も、私たち手術室看護師の大切な仕事。
でもそのぶん、休むタイミングを逃してしまったり、自分のことを後回しにしがちなのも事実です。
勤務間インターバル制度は、医療者と患者の安全を守る“休むためのルール”として生まれた仕組みです。
働き方の選択肢が増えてきた今だからこそ、「無理せず働ける環境かどうか」を自分の中で見つめ直してみることも大切なのかもしれません。
まずは、知ることから。
そして、自分の体に耳を傾けることから。
“ちゃんと休む”を当たり前にできる職場づくり、一緒に考えていきましょう。