手術中、執刀医から「サージセル出して」「タコシール準備して」と言われて、内心ドキッとした経験はありませんか?
出血部位への止血補助や、組織同士の接着・閉鎖に使われる薬剤で、種類によってさまざまな製品が使われています。
「名前は知っているけど、違いがよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。
加えて、これらの中には特定生物由来製品という区分に分類されるものもあり、使用後の記録を20年間保存する義務など、知っておくべきルールもあります。
この記事では、手術室でよく使われるサージセル®・タコシール®・ベリプラスト®Pの3製剤に絞って、特徴や使い方のポイントをわかりやすくまとめました。
新人さんの予習にも、復習にも役立てていただけると嬉しいです。

自著
総合医学社「オペ看ノート」
局所止血剤・組織接着剤とは
手術室で使う局所止血剤と組織接着剤はいずれも外科的処置を補助する医療材料ですが、主たる目的は異なります。
局所止血剤は、縫合や電気メスの凝固だけでは十分に止血しにくい部位に用い、止血を補助するための製品です。
凝固反応を利用したり、物理的に出血部位を被覆・封鎖したりして止血を促します。
組織接着剤は、組織や切離面を接着・被覆し、血液や体液の漏れなどを防ぐことを目的とした製品です。
縫合の補強などに用いられます。
ただし、フィブリン系製剤のように、止血補助と組織接着の両方に使われるものもあり、実際には明確に二分できない場合があります。
手術室でよく使われる製剤

代表的な3製剤をひとつずつ見ていきます。
それぞれ素材・形状・使い方が異なるので、使用場面と合わせて覚えておきましょう。
サージセル®アブソーバブル・ヘモスタットMD

サージセルは植物由来の吸収性止血剤です。セルロースを酸化して得られた酸性多糖類繊維を用いており、体内に留置しても吸収されます。
形状は2種類あり、使用場面によって使い分けます。
| 形状 | 主な使用場面 |
|---|---|
| コットン型 | 主に開腹症例 |
| ガーゼ型・ニューニット | 主に鏡視下手術 |
サージセルは乾燥した状態で使用します。
血液や水気を拭き取った鑷子などで作業しましょう。

コットン型を薄く裂くときは「てっさにして!」と言われてました(笑)
※てっさ:ふぐ刺し、ふぐの薄造りのこと
タコシール®組織接着シート


タコシールは、スポンジ状のコラーゲンシートをベースに、ヒトフィブリノゲンとヒト由来のトロンビンを固着したシート型の生体組織接着・閉鎖剤です。
「タコ」という名前から「タコの成分が入っているの?」と思われがちですが、タコの成分は入っていません。
「速さ」を意味する「Tacho(タコ)」と、接着・閉鎖を意味する「Seal(シール)」を組み合わせた名前です。
タイプは2種類あり、使用場面によって使い分けます。
| タイプ | 使い方 |
|---|---|
| フラットタイプ | 生理食塩液で活性成分固着面(黄色面)をわずかに濡らして使用 |
| ロールタイプ | 濡らさずに、ポート・トロッカを通して使用 |
ベリプラスト®Pコンビセット


ベリプラスト®Pは、フィブリノゲンとトロンビンを用いた組織の接着・閉鎖を促すフィブリン糊製剤です。
調製方法がやや複雑なため、事前に手順をしっかり把握しておきましょう。
ベリプラスト®Pは、使う30分以上前に冷蔵庫から出して室温に戻してから使用します。
調整方法は以下の通りです。



CSL pro(CSLベーリング株式会社)というサイトで
調製方法が動画で見られます!
※登録不要
特定生物由来製品とは


特定生物由来製品とは、人や動物由来の原料で作られた医薬品・医療機器のうち、感染症などのリスクが特に高いと判断されたものに指定される区分です。



タコシール®とベリプラスト®Pも、特定生物由来製品に分類されます!
特定生物由来製品の使用時には患者さんへの説明と同意が必要です。
特定生物由来製品の使用にあたっては、医師によるリスクと必要性の説明は義務付けられていますが、必ずしも書面による同意書の提出が必要なわけではありません。
ただし、輸血用血液製剤などの一部の製剤では、医療機関のガイドラインや安全管理の観点から書面での同意を求められることが一般的です。
また、使用後は20年間の記録保存が義務づけられています。
使用したら以下の内容を記録し、20年間保存しなければなりません。
- 製品名
- 製造番号(製造記号)
- 患者氏名・住所
- 使用日 など



製品によっては製造番号のシールがついているものもあります。
おわりに
今回は、手術室でよく使われる局所止血剤・組織接着剤をご紹介しました。
それぞれ素材や使い方が異なるので、最初はなかなか覚えにくいかもしれません。
でも、ひとつひとつの薬剤の特徴を知っておくと、いざというときに慌てずに動けるようになると思います。
また、タコシール®とベリプラスト®Pは特定生物由来製品です。
使用後の記録・保存義務など、ルールもあわせて把握しておくことが大切です。
施設によってルールの運用が異なる場合もあるので、自分の病院のやり方を確認しておくと安心ですね。
手術室の薬剤は種類が多く、最初から全部覚えようとすると正直大変です…。
日々の手術の中で少しずつ「あ、これか」と積み重ねていけば、きっと自信につながります。
【参考文献】
- 日本麻酔科学会・周術期管理チーム委員会 編著:周術期管理チームテキスト第5版,日本麻酔科学会,p35・p219-220,2026
- 武田純三 編著:手術室の薬剤114.メディカ出版,p183-187,2025
- NPO法人国際健康福祉センターデバイス研究会 編:手術室デバイスカタログ,金原出版 ,p385-396,2022
- ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社:SURGICEL Absorbable Hemostat 添付文書
- CSLベーリング株式会社:タコシール®組織接着シート 添付文書
- CSLベーリング株式会社:ベリプラスト®P コンビセット組織接着用 添付文書
- CSLベーリング株式会社:ベリプラスト®P コンビセット組織接着用 調製方法


















