腹臥位で行う脊椎手術や背部の手術では、体位固定に「四点支持器(フレーム支持台)」が使用されることがあります。
この器具は腹部の圧迫を避けることで、出血リスクを減らし、安全に手術を行うために重要な役割を担っています。
しかし一方で、支持部位に長時間の圧がかかることで褥瘡のリスクも高くなってしまうのが悩ましいところ。
現場でも「どうすれば褥瘡を防げるの?」「みんなはどんなケアをしてるの?」といった声をよく耳にします。
そこで今回は、四点支持器を使用する際の褥瘡対策について、実際の手術室看護師の工夫や現場で使われているアイテム、よくある疑問までまとめてご紹介します!
この記事は、筆者のInstagramのストーリーズに設置した質問BOXを通じて、フォロワーさんから寄せられたリアルな声やDMのコメントをもとに作成しています。実際の現場での工夫や体験談をご紹介していますが、あくまで一例であり、情報によって生じた不利益・損害等については一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

自著
総合医学社「オペ看ノート」
メディカ出版「メディカLIBRARY」
エッセイ:オペナースしゅがーの脳腫瘍日記
クラシコ株式会社「NURSE LIFE MIX」
NLMメイトとして記事連載中
記事:オペ看ラボ
漫画:しゅがーは手術室にはいられない
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四点支持器とは?
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四点支持器(フレーム支持台)は腹臥位で使用する体位固定器具で、主に胸・腰椎手術などに用いられます。
患者の前胸部と腸骨部を4点で支持することで、腹部の圧迫を避けながら安定した手術体位を確保できます。
四点支持器を使う目的
- 腹部圧迫の軽減・腹圧上昇防止
四点で体幹(両胸部・両腸骨部)を支持し、腹部を浮かせることで、腹部の圧迫を避けます。
これにより、腹腔内の静脈圧の上昇を防ぎます。 - 術中出血の軽減
腹部が圧迫されると、腹部および脊椎周囲の静脈、特に硬膜外静脈叢の圧が上昇しやすくなり、術中に出血が増加する原因となります。
これを防ぐため、腹部の圧迫を回避できる四点支持器が用いられます。
しかし、支持部位に長時間の圧迫が加わることで、以下の部位で褥瘡が発生しやすくなります。
褥瘡好発部位
以下の部位は、腹臥位手術で四点支持器を使用した際に特に圧迫がかかりやすく、褥瘡が発生しやすいとされています。
体位固定時には、これらの部位に注意を払い、必要に応じて体圧分散用具を使用するなどの予防策が重要です。
- 前額部
- 頬部
- 下顎部
- 前胸部
- 腸骨部
- 膝部
- 陰部(男性)
四点支持器を用いる体位固定の注意点
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四点支持器使用時は、褥瘡だけでなく神経麻痺や血管圧迫などの合併症にも注意が必要です。

複数人でチェック!
MDRPU予防 (医療関連機器褥瘡) | 気管チューブなどによる顔面への圧迫がないか |
---|---|
腕神経叢麻痺予防 | 腋窩の圧迫がないか |
迷走神経反射 失明予防 | 眼球圧迫がないか |
外側腓骨損傷予防 | 下肢の固定帯による腓骨小頭の圧迫がないか |
尺骨神経麻痺予防 | 上肢の固定帯による肘頭部の圧迫がないか |
大腿外皮神経麻痺予防 | 四点支持器による上前腸骨棘部の圧迫がないか |
四点支持器使用時の腹臥位の褥瘡対策



四点支持器(腹臥位)の褥瘡対策、どうしてる?
手術室での褥瘡発生要因とその対策
手術室における褥瘡発生の主な要因は「体圧」「ズレ・摩擦」「皮膚局所の温度・湿度」です。
それぞれの対策方法を見ていきましょう。
体圧 | 体圧分散寝具の使用 | 置き直し 背抜き (用手的除圧) |
---|---|---|
ズレ・摩擦 | ドレッシング材 フィルムドレッシング材 被膜材 | |
皮膚局所の 温度・湿度 | 多層性シリコンフォームドレッシング材 | 術中体温36〜38℃を維持 |



便利で良い製品は多いけど、価格のハードルが高くて手が出せないことも…。
みんなの褥瘡対策
手術室看護師に聞いた、実際の褥瘡対策をご紹介します。



みんなは何を使ってるの?
ドレッシング材
多層構造ドレッシング材で回答が多かったのは、この2つでした!
- アレビンライフ
- ふぉーむPro
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【アレビンライフ】
多層構造のポリウレタンフォーム保護パッド材。



四点支持部にソフトナース、患者さんの前胸部、両腸骨の4か所にアレビンライフを貼付しています。



4点の間に枕やスポンジを入れて圧分散してるのと、アレビンライフを貼ってます!



アレビンライフを前胸部に貼り、4点支持台と体の間にソフトナースを挟んでいます!



うちはアレビンライフを導入してから褥瘡できてないです!
軽度の発赤で済むようになりました。



後方固定はアレビンライフを使ってます!



うちの病院では、長いオペ時間の場合は、アレビンライフを両前胸部と両腸骨に貼って予防してます



リモイスコートを吹きかけて4点支持が当たるところにアレビンライフを貼ってます!



リモイスコートを散布して、アレビンライフとかかテリーロールを貼ってます。



スミネフのアレビンライフを好発部位に貼ってます!!
【ふぉーむPro】
多層構造のシリコーンフォーム皮膚保護パッドです!



私の働いている病院では、胸部や腸骨、膝はふぉーむプロというクッション材を使ってます。



ふぉーむプロを貼ってます。



ふぉーむらいとを2枚貼り!



ふぉーむproを貼っています。



フォームプロを貼ってます!
コスト的に6枚しか貼れないので足りない部分はエアウォールを貼ってます。



四点支持器の時はオペ時間と患者さんの状態によりますが、フォームプロを貼ったりワセリンを塗ったりしてます!
ジャクソンベットではスポンジを敷いてます!
フィルムドレッシング材
フィルムドレッシング材で回答が多かったのは、この3つでした!
- パーミロール
- エアウォール
- オプサイト
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【パーミロール】



昔はパーミロールを貼ってました。
透明のフィルムのやつ



胸部、腸骨部などにパーミロールを貼付。
四点支持器専用のクッション付きカバーを購入して対応してます。



パーミロールを胸部、腸骨部にはってます!



パーミロールを貼り貼りしてます。



ラミネクは皮膚剤→パーミロール→ベビーパウダー
【エアウォール】



私は約7割が脊椎のオペ室です。
本当は多層構造のシリコンフォームドレッシングを使いたいのですが、コスト面で採用できず…
エアウォールというフィルムテープを使用しています。
腹臥位1時間未満のオペではキャビロンクリームという皮膚保護剤のみを身体に塗布してます。
エアウォールは退室までに剥がせたりリムーバーを使って剥がし、皮膚に密着して剥がしたら危なそうな肌ならそのまま帰室させ、翌日、病棟の清拭の時に剥がしてもらってます!
今のところエアウォールで事足りてます。笑



エアウォール + 褥瘡予防用のクリーム + プラシート + ソフトナースに落ち着きました!
【オプサイト】



皮膚剤を塗って前胸部から腸骨にかけてオプサイトを貼ってます。



四点支持器の当たる部分と腹部にオプサイトを貼ってベビーオイルを塗ってま。



オプサイトを貼ってます。
スプレータイプの保護剤を使用する場合もあります。
被膜材
被膜材で回答が多かったのは、この2つでした!
- リモイスバリア
- キャビロン


【リモイスバリア】



リモイスバリアを塗り始めてから一切褥瘡ができません!!



やっぱりリモイスバリアを塗布、ドレッシング材を貼付したりですかね〜



胸部にはリモイスバリアを塗布、顔面・膝はオプティフォームを貼付
【キャビロン】



キャビロンなど保護剤+骨突出部位にはハイドロサイトを貼ってます



キャビロンスプレー、テガダーム、ハイドロサイト等



キャビロンを塗ってます
置き直し、背抜き
同じ部位へ長時間圧が集中しないようにする手技です。
置き直し | 身体にかかる引っ張り応力、断応力の軽減 |
---|---|
背抜き | ベッドや固定具と皮膚の間に生じるヨレを軽減 |



患者さんに合わせて4点支持器の幅を医師が入室後に行います。
また、必ず置き直しをしてます!



肋骨を含め当たる場所に、ハイドロサイトシールを貼付と、体位の置き直しが必須です。



ソフトナース + アレビンライフ + Dr許可のタイミングでビニールの除圧手袋を使用して除圧です!
その他の工夫
【ベビーパウダー】



皮膚剤、パーミロール、ベビーパウダーの順で貼付・散布。
前胸部、季肋部、腸骨部、膝に。



当院ではベビーパウダーを圧迫部位や好発部位に塗布してます!



うちの病院では、皮膚トラブル予防としてベビーパウダーを使用しています。
特に腸骨や胸部、膝など骨が突出していて圧がかかりやすい部位に、あらかじめ散布しておくことで、摩擦軽減や発赤の予防に効果的だと感じています。



ベビーパウダー!
現場によって、ケアの工夫ってさまざまですね✨
四点支持器を使わない



四点支持器をやめてピュアフィックスに切り替えました。
めちゃくちゃ楽になりました(笑)



前は4点支持器を使ってましたが、今はSRx2を使い出して、体幹の褥瘡が0になりました!



色々試して結果支持器は使わないことになりました。
ソフトナースを3枚重ねにして使ってます。



うちは4点支持器は使わずピュアフィックスという製品を使っています。
ワセリン塗布のみ!



四点支持器じゃなくて、腹臥位用ポジショニングウレタンフォーム!
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認定看護師に相談する
皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC※)に相談する方もいらっしゃいました。
※Wound(創傷)・Ostomy(オストミー)・Continence(失禁)



アレビンライフを使用し、必ず褥瘡ハイリスク患者ケア加算をとってます!by WOC



皮膚排泄認定ナースからパーミロールを貼るように言われてます。
でも、皮膚剥離があるから検討中。



フォームライトを貼り!
骨突出が激しい人は重ね貼りです。
WOCを巻き込んで対策してます。



WOCと相談できると心強いですね!
そして、加算もめちゃくちゃ大事…ッ!!
おわりに
四点支持器を使うときの褥瘡対策は、病院によっても大きく異なり、「これが絶対に正解!」という方法があるわけではありません。
大切なのは、患者さんの状態や手術時間、使用する器具に合わせて、チームで連携しながら最善を選んでいくこと!
- 褥瘡好発部位をしっかり把握すること
- 体位固定時の注意点を確実にチェックすること
- 現場に合った対策を見つけること
- チーム全体で情報共有すること
- WOCとの連携も大切にすること
「うちはこんな工夫してるよ」「この製品、コスパよかった!」など、現場で使えるアイデアがあれば、ぜひ教えてくださいね。
みんなの知恵をシェアして、少しでも患者さんの苦痛を減らしていけたらうれしいです。
今後も、現場で役立つ情報をお届けしていきます!
一緒に頑張っていきましょう!
【参考文献】
- 武田知子 編著:NEWはじめての手術看護.メディカ出版,p90-92,2022
- 澤聡貴 他編著:オペナースのための手術体位 最新Q&A52 (オペナーシング別冊).メディカ出版,p53-55,2022
- 日本麻酔科学会・周術期管理チーム委員会 編著:周術期管理チームテキスト第4版,日本麻酔科学会,p527-535,2021